脳神経内科とはAbout
脳神経内科は、脳・脊髄・末梢神経に起こる異常を診療する科です。
脳卒中、片頭痛、認知症、パーキンソン病などの神経難病、ギランバレー症候群などの末梢神経炎、をはじめとした多くの病気が対象となります。精神科や神経科・心療内科は“こころの問題”を扱う科ですが、脳神経内科は実際に脳や神経そのものが傷んでいる病気を扱います。ではどのようなときに脳神経内科を受診するのがよいでしょう。症状としては、頭痛、もの忘れ、転びやすい、手足が動かしづらい、めまい、ふらつき、ふるえ、しゃべりづらい、しびれ。このような症状があるときは、脳神経内科の扱う疾患が疑われます。是非ご相談ください。精査が必要だが当院に機器がない場合、あるいは入院治療が必要な場合は、近隣の脳神経内科・外科専門医のいる病院(長野赤十字病院、長野市民病院、小林脳神経外科病院、信州大学附属病院 など)へ患者さんのご希望に合わせて紹介させていただきます。
脳神経内科で扱う疾患の例
- 頭痛
- もの忘れ
- 転びやすい
- 手足が動かしづらい
- めまい
- ふらつき
- ふるえ
- しゃべりづらい
- しびれ
このような症状があるときは、脳神経内科の扱う疾患が疑われます。
是非ご相談ください。
めまいdizziness
一言でめまいといっても、ぐるぐる回るめまい(回転性めまい)、ふわふわするめまい(浮動性めまい)、立ち上がった時などに目の前が暗くなって意識が遠くなるようなめまい(眼前暗黒感)、といったさまざまなものが「めまい」と呼ばれます。ここでは回転性めまいと浮動性めまいについてお話します。
回転性めまいや浮動性めまいの原因となる場所は、ふたつあります。
ひとつは「耳(内耳)」、もうひとつは「脳(小脳や脳幹)」です。どちらが原因か、すぐわかる場合もありますが、なかなかわからないときもあります。
耳の症状(耳鳴りや聴力低下)があれば、内耳からくるめまいが疑われます。複視やしゃべりづらさ、顔面や手足の運動障害があれば、脳からくるめまいを考えなくてはなりません。ところが、「めまいだけ」という場合は詳細な診察をしないとどちらが原因かちょっと難しい。
それぞれのめまいの特徴を知っておきましょう。
内耳が原因のめまい
良性発作性頭位めまい症
最も多いめまいの原因です。平衡感覚を感じる内耳で、耳石という部品の一部がはがれて三半規管の中に落ちてしまうために突然発症します。寝返りなどで頭を動かした時にこの耳石のかけらが三半規管でごろごろ動くため、ぐるぐる回るめまいが起きます。頭を動かすのを止めると、耳石は動かなくなるのでめまいは1分以内に収まります。治療は、頭を動かす体操です(Epley法など)。これを行うと、迷い込んだ耳石を三半規管から追い出すことができます。
前庭神経炎
内耳から脳へつながる神経(前庭神経)に炎症を起こすことによるめまいです。犯人はヘルペスウイルスではないかと疑われています。ぐるぐる回転するひどいめまいが突然おこり、2~3日続きます。すっかり良くなるには1-2週間かかります。治療は抗めまい薬、制吐剤、で症状を軽くし、回復を待ちましょう。
メニエール病
内耳の中を流れている内リンパという水が増えてしまう(内リンパ水腫)ことが原因です。ここになんらかのきっかけ(ストレスなど)が加わると水がさらに増えて、内耳の症状(めまいと難聴や耳鳴・耳閉感)が発作的に起こります。この発作は繰り返し起こり、1回の発作は数分~数時間続きます。治療としては抗めまい薬と制吐剤に加えて、浸透圧利尿薬を使います。予防のためには、内リンパ水腫を増悪させないようストレスを避けることが大切です。
脳が原因となるめまい
脳卒中(小脳・脳幹の脳梗塞と脳出血)
めまいの原因としては決して多くありませんが、最も気を付けたい病気です。多くの場合は突然のめまいに加えて、ものが二つに見える(複視)、しゃべりづらい(構音障害)、顔や手足が動かしづらい(失調・麻痺)、しびれる(感覚障害)、などの症状を伴います。またじっとしていればすぐおさまる良性発作性頭位めまいと違って、めまいが持続しやすい点も特徴です。
しかし例外もあります。一過性脳虚血発作という、脳への血流が低下し脳梗塞になりかかった後しばらくして血流が改善するという発作では、短時間でめまいが改善することがあります。これは脳梗塞の前兆ですので気を付けなくてはなりません。
めまいだけ、と思われても、立っていられない・歩けない場合は、小脳の脳卒中によって体幹失調(身体の中心のバランスがとれない)が現れているのかもしれません。すぐに病院を受診しましょう。
片頭痛によるめまい(前庭性片頭痛)
片頭痛のある方にめまいが起こることがあります。これは数分~数日にわたっておこるめまいで、頭痛に関連して起こることもあれば、まったく関係なくめまいだけが生じる場合もあります。めまいは浮動感だったり回転性だったりとさまざまです。片頭痛のある方に繰り返しひどいめまいが起こるときは疑ってみます。
それ以外の脳の疾患
脳腫瘍、脳炎、薬による中毒などもめまいの原因となります。いままでの病気について、服用している薬について、症状の特徴について調べた上で注意深い診察と場合によってCT・MRIなどの検査を行って診断します。
内耳からの平衡感覚は前庭神経を通して脳幹・小脳に送られます。脳幹・小脳はこの情報をもとに、身体の位置や眼球運動を調節して、からだの位置を適正に保とうとします。これらのどこかに異常があると、めまいやふらつきが生じます
しびれ(異常感覚)Numbness
しびれを起こす原因はたくさんあります。
皮膚~末梢神経~脊髄~脳のどこかに異常を生じることでしびれが起こります。どこに異常があるのか、しびれのある場所・範囲からだいたいの推測をし、MRIなどの撮影を行って診断してゆきます。
比較的多いしびれの原因を上げておきます。
手根管症候群
片手の親指~薬指の手掌側がしびれます。
朝起きたときにしびれやすく夕方は改善しやすいという点が特徴です。
手首の真ん中あたりを押したり手首を曲げたりしてしびれが強くなれば可能性は高いです。
手首の使い過ぎによる腱鞘炎や妊娠によるむくみなどが原因になります。
糖尿病の患者さんにもしばしば起こります。治療はまずは手首の安静です。
頚椎症
頸椎が老化で変形したり、頸椎の間にあるクッションの椎間板の位置がずれたりして頸椎から出てくる神経にあたると手~腕のどこかにしびれが起こります。
特に首を斜め後ろに傾けたときなどにしびれが強くなる場合はこのしびれが疑われます。
坐骨神経痛
お尻から大腿後面~ふくらはぎにかけて痛くなるのが坐骨神経痛です。
坐骨神経のどこか(お尻やお腹の奥、腰椎の出口や中)などで圧迫などされるとこの痛みが出ますが、一番多いのは腰椎の変形やヘルニアにより神経の出口などで圧迫される場合です。
症状とMRI画像などから診断します。急に片足の後ろ側が痛くなったときなどに疑われます。
坐骨神経がお尻の筋肉で圧迫されて出現する梨状筋症候群というものもあります。この場合は梨状筋を指で押さえると痛みが出るのが特徴です。
脳卒中
脳卒中よるしびれは突然起こる半身のしびれです。
脳の中で知覚神経の通り道で血管が破れたり詰まったりしたときに発症します。
半身全部でなく、片側の唇と手先だけという場合もありますので、突然に出たしびれは早めに検査を受けましょう。
多発神経障害
糖尿病、ビタミン不足、炎症などで全身の神経が傷んできたとき、神経の細い部分から壊れてくるため、両手足の先からしびれが始まります。
原因を調べてその治療をすることが必要です。
しびれでお困りの方は是非一度クリニックにいらしてください。
ふらつきlightheadedness
ふらつく、という症状はさまざまな病態から生じます。下肢の脱力によって生じる場合、身体の平衡感覚がとれずにふらつく場合、姿勢を崩したときに姿勢を保てず転びやすくなる場合、貧血や低血圧のある方が立ち上がった時に脳への血流が少なくてふらつく場合、などなど。 ここでは平衡感覚の障害と、姿勢をたもてないことについてお話します。
平衡感覚を保つのは内耳と小脳・脳幹部です。内耳の障害は「めまい」の項をご参照ください。
小脳の疾患
両足の間を広くあけてバランスをとろうとする歩行が特徴で、お酒に酔った時のような千鳥足様になります(頭は決して酔っていません)。継ぎ足歩行(一本の線の上を歩くようにつま先と踵をくっつけて歩く)では、うまくできなくて足が離れてよろけてしまいます。人差し指で鼻の頭を触ってもらうと(指鼻試験)スッと触れず手がふらついてしまう、お酒に酔ったような呂律の回りづらさ(構音障害)を伴う、こんな症状のときは小脳の病気を疑います。
急激にこのような症状になった時は、小脳の脳卒中を考えます。ゆっくりと進む場合は小脳を障害する多くの病気(脊髄小脳変性症や小脳炎、薬の副作用など)を考えなくてはなりません。血液検査や画像検査(CTやMRI)を行って、何の病気か調べてゆきます。
パーキンソン病
姿勢を保つことが苦手になり転びやすい病気の代表はパーキンソン病です。 姿勢を保てないのは代表的な症状ですが、それ以外に、ふるえ、動きが鈍くなる、身体が固くなる、などの症状が出現します。これらの症状があり、抗パーキンソン病薬が有効だったときに、パーキンソン病と診断します。 姿勢を保てず転びやすいという症状がありながら他の症状がないとき、あるいは抗パーキンソン病薬が効かないときは、「パーキンソン症候群」と呼んでパーキンソン病と区別します。このパーキンソン症候群は、脳梗塞や進行性核上性麻痺などたくさんの病気が原因となり、より詳細な診察と検査が必要になります。
ふるえtremor
ふるえを起こす病態
生理的振戦
正常の人でも人前に出て緊張したときなどに、マイクを持つ手がふるえたりします。このようなふるえを生理的振戦と呼びます。生理的振戦は、甲状腺ホルモンが多い時や、薬の副作用などで出現・増強することがあります。
本態性振戦
最も多い振戦です。両手がふるえます。書字など何かをしようとするときの振戦で、何もしないときは震えません。若年からみられることも、高齢になって出現することもあります。遺伝性である場合も多く、ご家族に同様の振戦がみられます。
パーキンソン病
多くの場合片手や片足から始まります。安静時振戦と呼ばれ、何もしていないときにふるえ、何かしようとしたときにふるえが止まるのが特徴で、これは本態性振戦とは逆の現象となります。
ミオクローヌス
これやシャックリのように、ビクビクっとするようなふるえです。この症状はとてもたくさんの原因で起こり、健康なひとにもみられます。ストレスなどによる心因性で出現することもあります。ただし肝臓や腎臓などの働きが悪いなど、全身の状態が悪い時にも出現しますので注意が必要です。
何もしていないとふるえる、なにかするとき(コップを持つなど)ふるえが止まる
ろれつが回らないspeaking inarticulately
しゃべるのに必要な機能は舌や口腔の筋肉、この筋肉と神経をつなぐ神経筋接合部、神経(舌や口腔と脳をつなぐ、舌下神経、舌咽神経、顔面神経、三叉神経)、そして脳。これらのどこかに異常があると「しゃべりづらい、呂律が回らない」といった症状が出現します。
舌や口腔そのものの病気
腫瘍や炎症があげられます。どこか特定の部位に痛みや違和感があるときはこれらの病気を考えます。
神経筋接合部の病気
重症筋無力症が代表です。疲れてくると呂律が回らなくなるのが特徴です。多くの場合は眼瞼下垂や複視、首や肩などの脱力感を伴っています。
脳神経の病気
急に起こる神経炎としてギラン・バレー症候群などがあります。
脳の病気
この場合いくつかのパターンがあります。
- 小脳や脳幹部の異常(脳梗塞や小脳変性症)この時はお酒に酔った時のような喋り方になります。
- 大脳の異常(脳梗塞や脳腫瘍など)お酒に酔ったような喋り方になったり、ぎこちない喋り方になったり、パーキンソン病などでは小声でぼそぼそとした喋り方になったりと、さまざまです。
- 失語症(大脳の言語野の脳梗塞、認知症など)なかなか言葉が出てこなかったり、名詞がおかしかったり、文法に誤りが出たり、言葉そのものの組み立てに異常が生じます。
呂律がまわらない場合は、たくさんの病態を考えなくてはなりません。
ぜひ脳神経内科を受診してください。
身体の脱力Body weakness
脳~脊髄、末梢神経、神経筋接合部、筋肉など、これらのどこかに異常がおこると筋力低下がおきます。どのように診断してゆくのでしょう。まずはどこの筋肉に筋力低下があるかを調べます。たとえば足の筋力低下があったときに、両足なのか片足なのか、片足ならひとつの筋肉なのか複数の筋肉なのか、などです。その低下の仕方で、どこが障害されているか推測します。
つぎに重要なのは「腱反射」です。腱反射は筋肉の付け根の腱を叩くと反射的に生じる筋肉の収縮です。有名なのは膝蓋腱反射で膝をハンマーで叩くと、足がピュッと伸びる反射です(昔は脚気の検査として知られていました)。腱反射は脳~脊髄の障害のときは強く(勢いよく)反応し、末梢神経の障害では弱く反応(あるいは消失)します。ですから腱反射を調べると、問題のある場所が脳~脊髄なのか、それとも末梢神経~筋肉なのかがわかります。
この腱反射と低下している筋肉の組み合わせに加えて、感覚障害があるか、筋肉の痩せはあるか、などを総合してどこにどんな問題がありそうか探ってゆくのです。
脱力を起こす代表的な疾患は以下のようなものがあります。
- 脳疾患脳卒中、脳腫瘍、脳炎、多発性硬化症
- 脊髄疾患脊髄炎、脊髄腫瘍、脊椎ヘルニア、変形性脊椎症、筋萎縮性側索硬化症
- 末梢神経疾患ギランバレー症候群、多発神経炎、絞扼性神経障害、遺伝性末梢神経障害
- 神経筋接合部重症筋無力症
- 筋疾患多発筋炎、筋ジストロフィー
他、とってもたくさんの疾患がありますので、ご心配な方はクリニックにおいでください。